飲食店メニューの産地などの不適切表示は厳しく処分されます。景品表示法で義務付けられている「表示の管理体制」を構築しておくことが重要です(景品表示法など食品の不当表示に関する研修を行っています)。

事件の概要

  • 焼肉店が他県産和牛を「但馬牛」と表示し、兵庫県が景品表示法に基づく措置命令(優良誤認表示)を行った
  • チラシやリーフレットに「但馬牛」を提供しているかのような表示をしながら、実際には但馬牛を仕入れておらず、他県産和牛を提供していた
  • 地域の知的財産として保護する制度である「地理的表示(GI)保護制度」にも違反しているとして農林水産省が措置命令を行った(飲食店において、客に提供する料理に但馬牛を使用していないにもかかわらず、そのメニュー、広告等に地理的表示である「但馬牛」及びこれに類似する「但馬和牛」等と不正に表示していた)

コメント(課題・問題点・防止策等)

  • 私の地元兵庫県での措置命令ですが、以前にもステーキ専門店で神戸牛を仕入れできなくて他の和牛を使用したとして措置命令を受けた事例があります。兵庫県初の措置命令だったと思います。
  • 同じ和牛とはいえブランド力のある但馬牛とは表示できません。そもそも有名ホテルやレストランでの不適切な表示が社会問題となって景品表示法が改正され規制強化されたという歴史があります。
  • 食材が高騰したり入手が困難になっている最近の状況ですが、適正に表示しなければ消費者を欺くことになりますので注意が必要です。
  • 牛肉の産地偽装の時には食品表示法に違反して行政処分を受けたり、個体識別番号の不適切表示で牛トレーサビリティ法に基づく行政処分を同時に受けたという話は聞きますが、今回のように地理的表示保護制度で措置命令を受けたことはあまり聞いたことがありません。このように食品の不当表示は複数の法律に渡って処分されるという厳しい対応になっています。
  • 措置命令の概要は「(1)事業者が行った表示は景品表示法に違反するものである旨を消費者に周知すること(2)再発防止策を講じ、これを役員及び従業員に周知徹底すること(3)今後、同様の違反表示を行わないこと(4)上記(1)(2)でとった措置について文書で報告すること」となっています。
  • ちなみに、景品表示法の措置命令は消費者庁だけではなく都道府県にもその権限が与えられていますが、実際には、都道府県が措置命令をするというのはなかなか仕事的にしんどい話なので、それでも公表されたというのは、今回は大きな違反だったということになります。
  • 景品表示法においては表示の管理体制の構築が義務付けられています。特に、不当表示を行った場合は、この体制ができているかどうかか行政処分になるか行政指導でとどまるかという分かれ道にもなるとも言われています。7つの項目が挙げられているのですが、その一つとして景品表示法の内容について従業員や役員に周知することすなわち研修等を通じてしっかり法律の内容を知ってくださいというのがあります。私も景品表示法に関する研修をしており、特に食品関連事業者の場合は食品表示法と合わせて不当表示を防止するための取り組みについてサポートしています。

兵庫県 公表資料

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他県産和牛を「但馬牛」と表示していた焼肉店竹田屋に対する景品表示法に基づく措置命令
2022年12月21日
担当部署名/県民生活部地方機関消費生活総合センター指導調整部指導調整課

 不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)に違反する行為(同法第5条第1号(優良誤認)に該当)を行った有限会社竹田屋に対し、同法第7条第1項の規定に基づき措置命令を行いましたので、消費生活条例第16条に基づき公表します。
 この事業者は、本場但馬で但馬牛を食べたいと考える観光客に対し、他県産和牛を「但馬牛」と誤認させる表示を行い不当に誘引したものです。
 なお、今回の処分は「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」を所管する農林水産省と合同で行いました。

関連資料

発表資料(PDF:269KB)
(別表)表示物一覧(PDF:185KB)
(別紙)実際の表示(PDF:419KB)
(別添)関係法令抜粋(PDF:154KB)

https://web.pref.hyogo.lg.jp/press/20221221_12033.html

兵庫県の発表資料から抜粋(クリックで拡大表示)

農林水産省 公表資料

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プレスリリース
特定農林水産物等の名称の保護に関する法律に基づく措置命令について
令和4年12月21日
農林水産省

農林水産省は、有限会社竹田屋が、同社経営の飲食店において、客に提供する料理に但馬牛を使用していないにもかかわらず、そのメニュー、広告等に地理的表示である「但馬牛」及びこれに類似する「但馬和牛」等と不正に表示していたことを確認しました。
この行為は、特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(平成26年法律第84号。以下「地理的表示法」という。)第3条第2項が禁止する地理的表示の不正使用に該当します。
このため、本日、同社に対し、地理的表示法第5条の規定に基づき、地理的表示の除去・抹消、原因の究明・分析の徹底、再発防止策の実施等について措置を命じました。

1.措置命令の対象者
名称:有限会社竹田屋(法人番号5140002039472)
住所:兵庫県朝来市和田山町久世田22番地1

2.経過
農林水産省近畿農政局が、令和4年7月から10月までの間、有限会社竹田屋に対し、地理的表示法第34条第1項の規定に基づく立入検査を行いました。
この結果、農林水産省は、同社が、少なくとも令和2年3月から令和4年7月までの間、同社が経営する飲食店において、客に提供する料理に但馬牛を使用していないにもかかわらず、そのメニュー、広告等に地理的表示である「但馬牛」及びこれに類似する「但馬和牛」等と不正に表示していたことを確認しました。

3.措置の内容
(1)経営のために使用している全ての広告、価格表及び取引書類(以下「広告等」という。)において、直ちに表示の点検を行い、地理的表示法第3条第2項に違反する表示がある場合は当該表示を除去し、又は抹消すること。
(2)経営のために使用している全ての広告等について、不適正な表示を行った主たる原因として、正しい表示を行うという意識及び地理的表示保護制度に対する認識が欠如していたと考えられることから、これらを含めた原因の究明・分析を徹底すること。
(3)(2)の結果を踏まえ、全役員及び全従業員に対する地理的表示保護制度についての啓発、その遵守の徹底その他の適切な再発防止対策を講じること。あわせて、その再発防止対策を全役員及び全従業員に周知徹底すること。
(4)これらにより、今後、地理的表示保護制度に違反する不適切な表示は行わないこと。
(5)上記(1)から(3)までに講じた措置について報告書をとりまとめ、令和5年1月20日までに農林水産大臣宛てに提出すること。

(参考)地理的表示保護制度の概要
地理的表示(GI)保護制度は、その地域ならではの自然や歴史、文化、風習の中で育まれてきた品質や社会的評価などを有する農林水産物・食品の名称を、地域の知的財産として保護する制度です。
GI登録によって、GI産品の名称使用の独占が可能となり、その名称の不正な使用に対しては、農林水産省が取締りを行います。これにより、模倣品の排除やフリーライドの防止を通じ、ブランド保護を図るものです。
農林水産省では、地理的表示の保護のため、今後とも、その不正使用を厳正に取り締まってまいります。

参考資料1 地理的表示法(抜粋)(PDF : 151KB)
参考資料2 但馬牛のGI登録情報
参考資料3 GI登録産品一覧(PDF : 1,222KB)

お問合せ先
輸出・国際局知的財産課

https://www.maff.go.jp/j/press/yusyutu_kokusai/chizai/221221.html

地理的表示(GI)保護制度 参考資料3 GI登録産品一覧(PDF : 1,222KB)

有限会社竹田屋 お詫び 令和4年12月21日

ニュース記事の紹介

※下記に紹介している記事や動画は時間の経過とともに削除される場合がありますのでご了承ください。また、新しいニュースがあれば追加します。

【関西テレビ】「但馬牛専門店」実は他県産を提供 焼き肉店に措置命令 「ブランド牛が高く仕入れられなかった」 (2022/12/21 15:50)

  • 【YouTube】https://youtu.be/i9CsBuQxtCc(リンク切れ)

「但馬牛専門店」実は他県産を提供 焼き肉店に措置命令 「ブランド牛が高く仕入れられなかった」12月21日 18:35

兵庫県は21日、景品表示法に違反する行為を行ったとして朝来市の有限会社竹田屋に対し、措置命令を行ったと発表しました。

兵庫県によると、竹田屋は少なくとも2020年3月から2022年7月までの間、各種広告媒体に「但馬牛」を提供しているかのような表示をしながら、実際には但馬牛を仕入れておらず、他県産和牛を提供していたということです。

同店の観光客向けの3面折りリーフレットには「但馬牛専門店、但馬牛と言えば“竹田屋”」などと記載し、客に対して店員は「当店ではすべて但馬牛を使用しています」などと説明していたということです。

兵庫県は、本場但馬で但馬牛を食べたいと考える観光客に対し、他県産の和牛を「但馬牛」と誤認させる表示を行って不当に誘引したとして、竹田屋に表示が景品表示法に違反していたことを消費者に周知することや再発防止策を講じることなどを命じました。

竹田屋は関西テレビの取材に対し、「売上が減少し、ブランド牛の価格が高く仕入れられなかった。反省している」とコメントしていて、すでに表示などは改善しているということです。

https://www.ktv.jp/news/articles/?id=03445(リンク切れ)

【神戸新聞】「但馬牛」と偽装表示し、別の和牛を2年以上提供 朝来の焼き肉店、店員もうその説明 県と農水省が再発防止命令 2022/12/21

2022/12/21 21:27神戸新聞NEXT

「但馬牛」と偽装表示し、別の和牛を2年以上提供 朝来の焼き肉店、店員もうその説明 県と農水省が再発防止命令

 ブランド価値の高い但馬牛をうたいながら、実際は別の和牛を提供していたとして、兵庫県と農林水産省は21日、景品表示法などに基づき、朝来市の焼き肉店を運営する「竹田屋」に再発防止を求める措置命令を出した。

 県立消費生活総合センターによると、同社は少なくとも2020年3月~22年7月、但馬牛ではない牛肉を使いながら、ホームページや看板に但馬牛と表示した。店員も「当店は全て但馬牛を使用」などと説明していた。

 今年6月に情報提供があった。経営者は「18年ごろから但馬牛が高騰して仕入れられなくなった。新型コロナウイルス禍で客が減り、但馬牛を打ち出せば客が戻ってくるのではと思った」と話しているという。

https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202212/0015909460.shtml

【読売新聞】チラシに「但馬牛焼肉」、低価格の他県産提供…県が焼き肉店に措置命令 2022/12/22

チラシに「但馬牛焼肉」、低価格の他県産提供…県が焼き肉店に措置命令
2022/12/22 19:02
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 兵庫県朝来市和田山町の焼き肉店「竹田屋」が、他県産和牛を但馬牛と偽って表示し、提供していたことがわかり、県は21日、景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして、同店に再発防止を求める措置命令を出した。

兵庫県庁
 発表では、同店は2020年3月~今年7月、チラシやガイドブックに「但馬牛焼肉」、ホームページに「厳選した但馬牛」などと表示しながら、実際には価格の安い九州や東北産の和牛を提供していた。県の調査に対し、同店の運営会社社長は「18年頃から但馬牛が高騰し始め、仕入れが難しくなった」と話しているという。

 県は「但馬牛を食べたいと考える観光客に誤認させる表示をし、不当に誘引した」としている。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20221222-OYT1T50084/

【NHK兵庫 NEWS WEB】但馬牛と偽わり他県産の肉を提供か 朝来の焼き肉店に措置命令 12月21日

兵庫 NEWS WEB

但馬牛と偽わり他県産の肉を提供か 朝来の焼き肉店に措置命令

12月21日 16時47分

朝来市の焼き肉店が、他県産の牛肉を兵庫県産のブランド牛「但馬牛」と偽って提供していたとして、県と農林水産省は再発防止の徹底などを求める措置命令を行いました。
焼き肉店は、「コロナ禍で売り上げが激減し、少しでも集客したかった」などと話しています。

措置命令を受けたのは、朝来市和田山町の焼き肉店「竹田屋」です。
県によりますと、店ではことし(令和4年)7月までのおよそ2年半にわたって、観光客向けのパンフレットやホームページなどで、兵庫県産の「但馬牛」を提供しているかのように表示していましたが、実際には但馬牛を仕入れておらず、すべて他県産の牛肉を提供していたことが確認されたということです。
店では九州や東北など全国各地から、但馬牛よりも安価な肉を仕入れていて、その量は少なくともおよそ4000キロにのぼるということです。
県と農林水産省は消費者を誤認させる、不当な表示を禁じた景品表示法に違反するとして、21日、焼き肉店に対し再発防止策の徹底などを命じる措置命令を行いました。
「竹田屋」の須磨克英 代表取締役は、「但馬牛の価格が高騰して仕入れが難しくなったが、コロナ禍で売り上げが激減し、少しでも客に来てもらおうとうその表示をしてしまった。反省している」と話しています。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/kobe/20221221/2020020551.html

投稿者プロフィール

赤松靖生(消費者法務と食品の専門家)
赤松靖生(消費者法務と食品の専門家)
◆神戸大学農学部畜産学科(昭和61年4月入学)・神戸大学大学院農学研究科(平成4年3月修了)
◆神戸市役所(平成4年4月入庁、平成26年3月退職)
「平成4~13年 保健所等での衛生監視業務(食品衛生・環境衛生・感染症対策)」
「平成14~24年 消費生活センター 技術職員(商品テスト・相談対応支援・事業者指導)」
◆一般社団法人はりまコーチング協会(平成26年4月設立、代表理事就任)
◆食品分野のダブルの専門家としてサポートします
元保健所食品衛生監視員として「食品表示法」をはじめとした食品衛生
元消費生活センター職員として「景品表示法」をはじめとした消費者法務
◆食品関連企業・商工会・給食施設等で研修実績あり(口コミ紹介が多い)