• ボツリヌス菌による食中毒は、たまにニュース報道されます
  • 特徴は、毒素による食中毒なので、症状が重篤で死に至る危険性があることです
  • 今回は「自宅で食べた白米か市販の総菜が原因か?」ということで、家庭内での食中毒ということでしょうか。市販の惣菜であれば、もっと患者が出るはずですので、保管時かもしれませんし、他が原因かもしれませんね。
  • ボツリヌス菌による食中毒といえば、1984年(昭和59年)に九州で発生した「からしれんこんによるボツリヌス中毒事件」を思い出します
    (高校生の時でしたが強烈に印象に残っています)
  • 真空パックなどの密封食品で、常温で放置しておくと、ボツリヌス菌が増殖し、食中毒の原因になることがあるので、家庭でも、事業者でも、食品の冷蔵保存など、適切な管理が必要です。
  • 密閉食品でも、120℃4分以上又は同等の加熱加圧殺菌がなされた「レトルトパウチ食品(容器包装詰加圧加熱殺菌食品) 」と表示されているものは常温で保存できます。
  • 酸素のない状態の食品に発生しやすく、容器包装詰め食品で、レトルトに類似しているけど、120℃4分の加熱処理がなされていないものや、ビン詰め、 自家製の缶詰による食中毒が発生しています。ボツリヌス菌が増殖すると、容器が膨張して、異臭がすることがあります。
  • 事業者においては、原材料として、食品の保存温度等の表示を確認し、保損温度・使用履歴を残すことが、HACCPに基づく衛生管理の一環としても重要です。汚染された原材料を使用して食中毒等を起こしてしまえば原因施設としての責任があります。衛生管理の第一歩は安全な原材料を使用することです。

【国立感染症研究所】からしれんこんによるボツリヌス中毒事件の概要

【国立感染症研究所】の資料より抜粋
からしれんこんによるボツリヌス中毒事件の概要

 1984年6月14日から6月28日にわたって発生した熊本県三香株式会社製造の真空パックからしれんこんに起因するボツリヌス中毒は9月26日厚生省集計で,表1に示すごとく13都県市にまたがり,患者31名,死者9名に達する大事件となった。

今回の全国にまたがる事件はなんらかの特殊な事情でからし粉にボツリヌス菌の微量汚染がおこり,これを使用した真空パック三香製造からしれんこんが菌発育に好適であり,流通過程で常温相当期間の後有毒化が進んだために生じたものと考える。

http://idsc.nih.go.jp/iasr/CD-ROM/records/05/05702.htm

東京都保健福祉局「食中毒を起こす微生物・ボツリヌス菌」

東京都保健福祉局 食品衛生の窓
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どんな食品が原因となりますか
 通常、酸素のない状態になっている食品が原因となりやすく、 ビン詰、 缶詰、容器包装詰め食品、保存食品(ビン詰、缶詰は特に自家製のもの)を原因として食中毒が発生しています。
 国内では、北海道や東北地方の特産である魚の発酵食品“いずし”による食中毒が、1997年頃までは報告されていましたが、 自家製の“いずし”がほとんど作られなくなり、“いずし”によるボツリヌス食中毒もほとんど見られなくなりました。
 代わって、容器包装詰め食品(特に、レトルトに類似しているが、120℃4分の加熱処理がなされていないもの)、ビン詰め、 自家製の缶詰による食中毒が発生しています。容器包装詰め食品の中でボツリヌス菌が増殖すると、容器は膨張し、開封すると異臭がする場合があります。

 乳児ボツリヌス症の原因食品として、以前は蜂蜜がありました。1987年10月、1歳未満の乳児には蜂蜜を与えないようにと当時の厚生省が 通知を出して以降、蜂蜜を原因とする事例は減少しました。蜂蜜以外、原因食品が確認された事例はほとんどありませんが、東京都で発生した事例で自家製野菜スープが感染源と推定されたものがありました。
予防のポイントを教えて下さい
 ボツリヌス菌の芽胞は土壌に広く分布しているため、 食品原材料の汚染防止は困難です。ボツリヌス食中毒の予防には、食品中での菌の増殖を抑えることが重要です。

【ボツリヌス菌による食中毒予防のポイント】
容器包装詰加圧加熱殺菌食品(レトルトパウチ食品)や大部分の缶詰は、 120℃4分間以上の加熱が行われているので、常温保存可能ですが、これとまぎらわしい形態の食品も流通しています。
「食品を気密性のある容器に入れ、 密封した後、加圧加熱殺菌」という表示の無い食品、あるいは「要冷蔵」「10℃以下で保存してください」などの表示のある場合は、必ず冷蔵保存して 期限内に消費してください。
真空パックや缶詰が膨張していたり、食品に異臭(酪酸臭)があるときには絶対に食べないでください。
ボツリヌス菌は熱に強い芽胞を作るため、120℃4分間以上の加熱をしなければ完全に死滅しません。そのため、 家庭で缶詰、真空パック、びん詰、「いずし」などをつくる場合には、原材料を十分に洗浄し、加熱殺菌の温度や保存の方法に十分注意しないと危険です。 保存は、3℃未満で冷蔵又はマイナス18℃以下で冷凍しましょう。
食中毒症状の直接の原因であるボツリヌス毒素は、80℃30分間(100℃なら数分以上)の加熱で失活するので、食べる直前に十分に加熱すると効果的です。
乳児ボツリヌス症の予防のため、1歳未満の乳児には、ボツリヌス菌の芽胞に汚染される可能性のある食品(蜂蜜等)を食べさせるのは避けてください。

https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/boturinu.html

厚生労働省「真空パック詰食品(容器包装詰低酸性食品)のボツリヌス食中毒対策」

ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 健康・医療 > 食品 > 食中毒 > 細菌による食中毒 > 真空パック詰食品(容器包装詰低酸性食品)のボツリヌス食中毒対策

真空パック詰食品(容器包装詰低酸性食品)のボツリヌス食中毒対策

 真空パックなどの密封食品(※)でも、常温で放置しておくと、ボツリヌス菌が増殖し、命にかかわる食中毒の原因になることがあります。ご家庭でも、事業者でも、食品の冷蔵保存など、適切な管理をお願いします。

 (※)120℃4分以上又は同等の加熱加圧殺菌がなされ、「レトルトパウチ食品(容器包装詰加圧加熱殺菌食品) [80KB]」と表示されているものは常温で保存できます。

容器包装詰低酸性食品とは
 容器包装に密封した常温流通食品のうち、pHが4.6を超え、かつ、水分活性が0.94を超えるものであって、120℃、4分間に満たない条件で殺菌を行ったものです。殺菌は、容器包装に詰める前後を問いません。

消費者のみなさまへ
「要冷蔵」「10度以下で保存」といった表示のある食品は必ず冷蔵保存して下さい。
リーフレット(消費者の皆さまへ) [189KB]

事業者のみなさまへ
 容器包装詰低酸性食品は、ボツリヌス菌食中毒を防ぐために、
 (1) 120℃で4分間加熱するか、
 (2) 生産から消費まで10℃以下で管理し、はっきり「要冷蔵」と表示する
 等の対策が必要です。
 事故を起こさないために、もう一度自社製品の対策を確認して下さい。
リーフレット(食品製造業者の皆さまへ) [192KB]

ボツリヌス食中毒の特徴
 ボツリヌス食中毒は、ボツリヌス菌が作りだす毒素を含む食品を摂取することで発症します。物が二重に見えたり、手足に力が入りにくくなり、放置すると呼吸困難などを起こして短時間で命にかかわる、重い病気です。

 ボツリヌス菌は、土壌・水などに広く存在します。熱にとても強く、100℃程度では、長い時間加熱しても殺菌できません。真空パックのような、酸素が極めて少ない密封状態で増殖し、毒素をつくります。
 このため、密封された食品は、120℃4分又は同等の方法で加熱するか、冷蔵保存するなどの対策が必要です。

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/03-4.html

リーフレット(消費者の皆さまへ) [189KB](クリックで拡大)

リーフレット(食品製造業者の皆さまへ) [192KB] (クリックで拡大)

ボツリヌス菌による食中毒(2021/07/30)のニュース記事の紹介

※下記に紹介している記事や動画は時間の経過とともに削除される場合がありますのでご了承ください。

【KAB熊本朝日放送】真空パックでも注意を ボツリヌス菌による食中毒(2021/07/30)

  • リンク先の記事にニュース動画あり

2021/07/30真空パックでも注意を ボツリヌス菌による食中毒
熊本県は山鹿市でボツリヌス菌による食中毒が発生したと発表し注意を呼び掛けています。

県によりますと今月17日に山鹿市の40代の夫婦に言語障害や呼吸困難などの症状が現れ、19日には子ども2人も発症しました。
夫婦は人工呼吸器が必要な状態で、今も入院中です。

16日に食べた白米、もしくは真空パックの総菜が原因である可能性があるということです。

県は密封された食品でも常温で放置するとボツリヌス菌が増殖するため袋が膨張していたり異臭がする場合は絶対に食べないようにと呼びかけています。

ボツリヌス菌をめぐっては1984年に、辛子れんこんによる食中毒で全国で11人が亡くなっています。

https://www.kab.co.jp/news/?NewsData=202107302266.php&path=video/202107302266.mp4&mode=1

【熊本日日新聞】家族4人がボツリヌス食中毒 山鹿市、白米か総菜原因か(2021年07月30日)

家族4人がボツリヌス食中毒 山鹿市、白米か総菜原因か

熊本日日新聞 | 2021年07月30日 11:29

 熊本県は29日、山鹿市の家族4人がボツリヌス毒素による食中毒を発症したと発表した。40代の夫婦が呼吸困難で入院中で、10代と10歳未満の子ども2人は回復した。県内のボツリヌス症発生は2012年以来。

 県によると、夫婦は17日、物が二重に見える複視や、ろれつが回らなくなる言語障害が現れ、医療機関を受診。19日には子ども2人にも脱力感などの症状が出た。

 県保健環境科学研究所(宇土市)が4人の血清や便を検査し、ボツリヌス毒素を検出したことから、29日に食中毒と断定。県は、4人が16日に自宅で食べた白米か市販の総菜が原因とみている。

 ボツリヌス症は、ボツリヌス菌が出す毒素で筋肉のまひなどが起こり、重症化すれば死亡する場合もある。1984年には辛子れんこんのボツリヌス菌中毒事件が発生し、全国で11人が死亡した。

 ボツリヌス菌は土壌や水に広く存在し、毒性をなくすには食材をよく加熱する必要がある。酸素が少ない密閉状態で増殖するため、県健康危機管理課は「食材を入れた真空パックが膨張している場合は食べずに捨ててほしい」と注意を呼び掛けている。(高宗亮輔)

https://kumanichi.com/articles/335668

投稿者プロフィール

赤松靖生(消費者法務と食品の専門家)
赤松靖生(消費者法務と食品の専門家)
◆神戸大学農学部畜産学科(昭和61年4月入学)・神戸大学大学院農学研究科(平成4年3月修了)
◆神戸市役所(平成4年4月入庁、平成26年3月退職)
「平成4~13年 保健所等での衛生監視業務(食品衛生・環境衛生・感染症対策)」
「平成14~24年 消費生活センター 技術職員(商品テスト・相談対応支援・事業者指導)」
◆一般社団法人はりまコーチング協会(平成26年4月設立、代表理事就任)
◆食品分野のダブルの専門家としてサポートします
元保健所食品衛生監視員として「食品表示法」をはじめとした食品衛生
元消費生活センター職員として「景品表示法」をはじめとした消費者法務
◆食品関連企業・商工会・給食施設等で研修実績あり(口コミ紹介が多い)