事件の概要

  • 千葉県船橋市の販売者が東京都中央卸売市場大田市場へ出荷した「みつば」から残留基準値(2ppm)を超えたプロシミドン3.0ppmを検出
  • 東京都が実施した検査で基準値超過が判明
  • 食品衛生法第59条第1項の規定に基づいて回収命令
  • 原因調査中
  • 健康被害の報告なし
  • 当該食品を毎日約700g(可食部換算で当該食品17.5袋に相当)ずつ一生涯食べても影響のない数値

コメント(課題・問題点・防止策等)

  • 「東京都が実施した検査で10月28日に基準値超過が判明した」というのは、定期的に行っている抜き取り検査だと思われる。市場内の検査なのか、販売店での検査なのかは書かれていない
  • 『生産者は「長年同じ栽培方法。今回、値を超えた原因は分からない」と説明しているという』ということ自体が再発防止に向けたハードルになる。つなり、原因がはっきりすれば対策できるが原因がはっきりしないままだと、同じ違反が起こる可能性がある。
  • 出荷組合ということでJAなどの団体がかかわっている可能性があるが、そういう組織の栽培基準を守っていれば通常は違反はないはずである。
  • 基準の1.5倍は結構な超過なので、出荷前に散布してしまったのが記録漏れしていたのかしれない。
  • 農薬の濃度確認。農薬の散布回数の確認。
  • ニュース報道では『わずかに基準値超える農薬 検出量は「毎日一袋食べても影響ない値」』とあり、これで回収するのはやりすぎではないかというような印象を持つ人もいるかもしれないが、食品の安全安心を確保するための必要な措置であり、検査できるのはほんのわずかで、氷山の一角ともいえる。
  • ちなみに、行政の検査は、収去検査と買い取り検査があって、収去検査は食品衛生法に基づき検体を無償で提供してもらい、買い上げ検査は購入して検査をする。一般的に、保健所が行っているのは前者の収去検査で、市場の検査所が行っているのは後者の買い上げ検査。

千葉県船橋市 公表資料 残留基準値を超える農薬プロシミドンを検出した「みつば」の回収について 令和3(2021)年11月2日

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食品衛生法違反者等の公表について

更新日:令和3(2021)年11月2日(火曜日)

食品衛生法第69条の規定により、船橋市が食品衛生法違反者に対し、不利益処分又は書面による行政指導を行った件について、以下のとおり公表します。
なお、公表期間については、不利益処分を行った場合は14日間を原則とします。書面による行政指導を行った場合は、原則として違反状態の改善後、14日経過するまでを公表期間とします。

食品衛生法第69条の規定
厚生労働大臣及び都道府県知事は、食品衛生上の危害の発生を防止するため、この法律又はこの法律に基づく処分に違反した者の名称等を公表し、食品衛生上の危害の状況を明らかにするよう努めるものとする。

2 違反食品等に対する不利益処分等
残留基準値を超える農薬プロシミドンを検出した「みつば」の回収について

 本日、東京都から市内販売者が東京都中央卸売市場大田市場へ出荷した「みつば」から農薬プロシミドン(3.0ppm)が検出され、食品衛生法第13条第2項に違反している疑いがある旨の通知がありました。
 船橋市保健所長は、当該食品の販売者に対し、食品衛生法第59条第1項の規定に基づいて下記食品の回収を命じたのでお知らせします。
 なお、当該食品を喫食したことによる健康被害の情報は、現時点ではありません。

1 販売者:宮久保出荷組合
  生産者:市内みつば生産者 1戸

2 対象食品:
(1)品 名:みつば
(2)違反数量・重量:280箱(1箱に10袋入り)他 ※1袋当たり約60g(可食部約40g)
(3)流通形態:合成樹脂製袋入り
(4)出荷年月日:令和3年10月20日(水曜日)

3 違反内容:食品衛生法第13条第2項違反
   残留基準値(2ppm)を超えたプロシミドン3.0ppmを検出

4 違反原因:調査中

5 検査機関:東京都市場衛生検査所 大田出張所

6 流通状況:東京都中央卸売市場大田市場の他、船橋市地方卸売市場に流通していたことが判明しており、詳細を調査中。

7 その他:東京都が実施した検査で10月28日に基準値超過が判明したため、生産者は10月29日以降の出荷を自粛しております。

■プロシミドンとは?
プロシミドンとは、ジカルボキシイミド系の殺菌剤です。
灰色かび病、菌核病等の植物病原菌に効果を示します。日本では1981年に農薬として登録され、果樹、野菜、いも、豆、花き、芝等に利用されています。

■健康影響について
プロシミドンのADI値(人が毎日一生涯にわたって摂取しても健康に影響のない量)は0.035mg/kg/日で、体重60kgの人であれば1日当たり2.1mgとなります。今回の検出値は3.0ppm(3.0mg/kg)であり、当該食品を毎日約700g(可食部換算で当該食品17.5袋に相当)ずつ一生涯食べても影響のない数値です。

https://www.city.funabashi.lg.jp/kenkou/eisei/001/p042641.html

食品衛生法の規格基準違反・回収命令の条文

  • 第13条第2項に該当する違反であり、第59条第1項に基づき回収命令をし、第69条の規定によりその旨公表した

食品衛生法

第十三条 厚生労働大臣は、公衆衛生の見地から、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、販売の用に供する食品若しくは添加物の製造、加工、使用、調理若しくは保存の方法につき基準を定め、又は販売の用に供する食品若しくは添加物の成分につき規格を定めることができる。
② 前項の規定により基準又は規格が定められたときは、その基準に合わない方法により食品若しくは添加物を製造し、加工し、使用し、調理し、若しくは保存し、その基準に合わない方法による食品若しくは添加物を販売し、若しくは輸入し、又はその規格に合わない食品若しくは添加物を製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、保存し、若しくは販売してはならない。
③ 農薬(農薬取締法(昭和二十三年法律第八十二号)第二条第一項に規定する農薬をいう。次条において同じ。)、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(昭和二十八年法律第三十五号)第二条第三項の規定に基づく農林水産省令で定める用途に供することを目的として飼料(同条第二項に規定する飼料をいう。)に添加、混和、浸潤その他の方法によつて用いられる物及び医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二条第一項に規定する医薬品であつて動物のために使用されることが目的とされているものの成分である物質(その物質が化学的に変化して生成した物質を含み、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質を除く。)が、人の健康を損なうおそれのない量として厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定める量を超えて残留する食品は、これを販売の用に供するために製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、保存し、又は販売してはならない。ただし、当該物質の当該食品に残留する量の限度について第一項の食品の成分に係る規格が定められている場合については、この限りでない。

第五十九条 厚生労働大臣又は都道府県知事は、営業者が第六条、第十条から第十二条まで、第十三条第二項若しくは第三項、第十六条若しくは第十八条第二項若しくは第三項の規定に違反した場合又は第九条第一項若しくは第十七条第一項の規定による禁止に違反した場合においては、営業者若しくは当該職員にその食品、添加物、器具若しくは容器包装を廃棄させ、又はその他営業者に対し食品衛生上の危害を除去するために必要な処置をとることを命ずることができる。
② 内閣総理大臣又は都道府県知事は、営業者が第二十条の規定に違反した場合においては、営業者若しくは当該職員にその食品、添加物、器具若しくは容器包装を廃棄させ、又はその他営業者に対し虚偽の若しくは誇大な表示若しくは広告による食品衛生上の危害を除去するために必要な処置をとることを命ずることができる。

第六十九条 厚生労働大臣、内閣総理大臣及び都道府県知事は、食品衛生上の危害の発生を防止するため、この法律又はこの法律に基づく処分に違反した者の名称等を公表し、食品衛生上の危害の状況を明らかにするよう努めるものとする。

ニュース記事の紹介

※下記に紹介している記事や動画は時間の経過とともに削除される場合がありますのでご了承ください。また、新しいニュースがあれば追加します。

【千葉日報】船橋市がミツバ回収命令 わずかに基準値超える農薬 検出量は「毎日一袋食べても影響ない値」2021年11月3日

船橋市がミツバ回収命令 わずかに基準値超える農薬 検出量は「毎日一袋食べても影響ない値」
2021年11月3日

 船橋市保健所は2日、市内の生産者1戸が東京・大田市場に出荷したミツバから、残留基準値をわずかに超す農薬が検出され、回収を命じたと発表した。東京都の検査結果を受け、この生産者はすでに10月29日から出荷を自粛している。

 市保健所によると、回収対象は10月20日に出荷した280箱分。健康被害の報告はない。基準値を超した農薬は「プロシミドン」で、今回の検出量は、このミツバを毎日700グラム(17・5袋分)ずつ一生食べても体に影響が出ない値ではあるという。生産者は「長年同じ栽培方法。今回、値を超えた原因は分からない」と説明しているという。

https://www.chibanippo.co.jp/news/national/846048

投稿者プロフィール

赤松靖生(消費者法務と食品の専門家)
赤松靖生(消費者法務と食品の専門家)
◆神戸大学農学部畜産学科(昭和61年4月入学)・神戸大学大学院農学研究科(平成4年3月修了)
◆神戸市役所(平成4年4月入庁、平成26年3月退職)
「平成4~13年 保健所等での衛生監視業務(食品衛生・環境衛生・感染症対策)」
「平成14~24年 消費生活センター 技術職員(商品テスト・相談対応支援・事業者指導)」
◆一般社団法人はりまコーチング協会(平成26年4月設立、代表理事就任)
◆食品分野のダブルの専門家としてサポートします
元保健所食品衛生監視員として「食品表示法」をはじめとした食品衛生
元消費生活センター職員として「景品表示法」をはじめとした消費者法務
◆食品関連企業・商工会・給食施設等で研修実績あり(口コミ紹介が多い)